多くの方にとって裏声とは、息の漏れたような声、優しい声、切ない声、そのようなイメージがあるのではないでしょうか。実は裏声にはいくつかの種類があり、それぞれ出し方や聞こえの印象が全く異なります。
そこで今回は、裏声の種類とそれぞれの出し方のコツを具体例を交えながらわかりやすく解説します。また、裏声を習得するメリットについても説明するので、きれいな裏声を出したい方は、ぜひ最後までお読みください。
はじめに、地声と裏声の違いについて以下の表にまとめました。
地声 | 裏声 |
・大抵普段の声で用いる
・声帯と声帯の粘膜部分が振動する |
・会話声では使わないことが多いが笑う時や叫ぶ時に使われることがある
・声帯は振動せずに声帯の粘膜部分のみが振動する ・大きく分けて3種類ある |
耳で聞いて地声と裏声が判別できることも多いですが、中には地声で話しているつもりが、実際には裏声を出していたという方も少なくありません。
地声と裏声では声帯の使い方が異なります。この辺りを意識的に分けて発声できるようになると歌の表現に用いやすくなります。
裏声は大抵の場合、息の漏れているような声である「ファルセット」をイメージされる方が多いでしょう。実は裏声には「ファルセット」「ヘッドボイス」「ミドルボイス」の3種類があります。そのうち「ヘッドボイス」と「ミドルボイス」を合わせて「ミックスボイス」と呼ぶことがあります。ここでは、それぞれの裏声の特徴について解説します。
ファルセットは、息の漏れたような声で、大抵は地声で出すことのできない高い音域で用いられます。「声が裏返った」と表現することがありますが、まさにその声を敢えて用いる発声方法です。裏声の中でも繊細さがあり、切なさや優しさなどを表現できます。
一方、鋭いビブラートをかけながらファルセットを発声すると、爽やかな疾走感を演出することもできます。そのため、高い音域だけでなく、低音から中音域にかけてファルセットを使うこともよくあります。
ファルセットの声色が好きではないという方も多くいらっしゃるのですが、うまく活用することで歌唱の表現が広がり、聴く人を魅了することができます。
ヘッドボイスとは、ファルセットと比較すると頭の上から声を出すようなイメージの発声方法です。(実際には頭で響いているわけではありません)芯があり、抜け感のある声ですのでオペラ歌手はもちろん、ポップスやロックにおいて地声で出すことのできない高音域をは、ヘッドボイスで発声すると力強い印象を与えることができます。
ミドルボイスもファルセットと比較するとヘッドボイス同様、響きが頭の上にあるようなイメージの発声方法です。ヘッドボイスよりも地声の響きに近づけることで、地声のように扱いながら中音域から高音域での発声が可能となります。ファルセットが発声できる音域で、声帯を閉鎖する感覚をキープしたまま喉を開くことで太さのある声を出すことができます。
地声のファルセットの境目(地声が苦しくなり、裏声に切り替えたくなる部分)を「換声点」と呼びます。その境目をなくすことが、ミドルボイス習得の鍵となります。「ミドルボイス」と「ヘッドボイス」を「ミックスボイス」と呼ぶこともあります。
きれいなファルセットを出すためにはいくつかコツがあります。ここでは、ファルセットの出し方のコツについて紹介します。ファルセットを使いこなしたい方は、ぜひ参考にしてください。
喉を緊張させると、苦しそうなファルセットに聞こえてしまいます(敢えてそれを狙って出すこともあります)。
喉に力が入ってしまう場合、以下のポイントを意識してみてください。
|
力が入ってしまう場合は、力が入らない状態を強制的に作ることでコツがつかみやすくなります。また緊張すると息を吐ける量が減るので、敢えて吐くことに意識をおくことも効果的です。
ファルセットは地声を裏返す発声なので、会話声よりもたくさんの息の量と、吐き出すスピードを意識するとうまくいくケースが多くあります。
歌によっては微かに囁くほどの小さな声の方がマッチする表現もありますが、その場合でも会話のときとは異なる息のコントロールに着目してみてください。息を吐く感覚がつかみにくい場合は以下のことを試してみてください。
|
発声において「喉を開ける」ことが良いと思われがちですが、一概にそうとも言い切れません。
あくびのような開け方をイメージして発声すると声が太くなりすぎて、意図したような声が出せないかもしれません。
喉の空間体積は声色に影響するので注意が必要です。
また、喉を開けることで不必要な力入ってしまう方もいらっしゃいます。
その場合は喉を開けることよりも、喉をリラックスする感覚を掴むことを先に行うことが、ファルセット発声の近道と言えます。
地声とファルセットを意識的にコントロールしている感覚がつかめない方は、交互に出す練習が効果的です。
地声の感覚は極端な方法でつかむことができます。
|
一方、ファルセットはそのような強い振動がありません。
普段から優しく、息っぽい声質でお話される方は地声の感覚をつかむことが大切ですし、普段の声が硬く、鋭い方はファルセットの感覚をつかめばその差に気付けると思います。
その違いが理解できれば、交互に出す練習は、歌の中で咄嗟にファルセットに切り替えることができるようになります。
例えば「ド(低)・ド(高)・ド(低)・ド(高)」のような1オクターブの開きがある音程で「「い(地声)→い(裏声)→い(地声)→い(裏声)」といった感じで発声してみます。
最初は切り替えるのが難しかったり、音程が思うようにコントロールできないかもしれませんが、慣れてくると音程の調整をつかさどる器官が順応してくるようになります。
ファルセットの出し方のコツでも挙げたポイントに加え、ヘッドボイスやミドルボイスではさらに意識したいポイントがあります。
そもそもファルセットと、ヘッドボイスやミドルボイスは決定的に異なるポイントがあります。それはファルセットは地声とは全く異なる声色であり、体感も「裏返った」とわかることがほとんどであるのに対し、ヘッドボイスやミドルボイスは「地声の延長で扱っているように聞こえる」ということです。
地声の発声と何ら変わらない強く太い響きがあるため、体感も地声と大きく変わりません。
そのため、以下のポイントに注意して練習をすると習得しやすいと思います。
息が漏れた裏声=ファルセットのままだと、いくら頑張っても強くて硬い地声と同じように扱うことができません。
高い音域の裏声を地声と同じ感覚で使うには「声帯の閉じる力」を身につけ利用する必要があります。
声帯をしっかり閉じ、息の漏れる量をコントロールすることで息の漏れていない裏声=ヘッドボイスやミドルボイスを作り出すことができるのです。
声帯を閉じる力を身につける発声練習(ボイストレーニング)で効果的なのは「スタッカート発声」です。
どれくらいの強さで声を出し、声帯を鍛えるのには個人差があります。
この部分は専門家やボイストレーナーに指示を仰ぐのがおすすめです。
地声で歌っていると、必ず苦しくなって、裏声(ファルセット)に切り替えたくなる場所が現れます。
実際、声帯もその辺りで開き易くなり、息が漏れ、裏声(ファルセット)になってしまいます。この場所を換声点と呼びます。英語では「Change Point」と訳され、まさに地声と裏声がチェンジしやすくなるポイントです。
この境目をなくすと、地声から裏声に繋げやすくなります。
しかし、裏声の発声時に声帯を閉じる力を身につけ、息の漏れない裏声(ヘッドボイスやミドルボイス)の感覚を身につけておかないと、地声と裏声の境目をなくすことは困難になります。
この理由は、それぞれの声帯の動きが関係しています。
ヘッドボイスやミドルボイスの声帯の動きは「息の漏れを防いで声帯全部、または一部を振動させる」点で地声の発声時の声帯の動きと似ているのに対し、ファルセットは「声帯は閉じず、粘膜のみ振動する」といったふうに地声の発声時とはまるで異なる動きだからです。
この感覚を身につけるのに有効なのは「サイレン発声」です。低音から高音に向けて、「あー」と滑らかに音をサイレンのように昇降させます。その際、途中で裏返りそうになるのを意図的に防ぎながら、その境目(換声点)を乗り越えられるよう練習します。
最初は慣れるまでに時間がかかるかもしれませんが、これができるようになると、高い声でも苦しさのない、ファルセットとは全く異なる声で高音発声ができるようになります。
その体感は、これまでの裏声とは違う、地声の延長線上のような自由さがあります!
どんな裏声であっても気をつけなければならないことがあります。それは「喉を開けすぎると声が重くなる」ということです。
例えるなら、重い荷物を持ちながら腕をあげると疲れたり、そもそも上にあげられなくなるのと似ています。
地声の限界あたりからはファルセットやヘッドボイス、もしくはミドルボイスで高音を発声することができますが、それらの発声を行ったとしても、さらに高い声を出そうとすると苦しさを感じるようになります。
その際、できる限り喉の空間体積を小さくすると音域を上に伸ばすことができるようになります。
聞こえとしてはなるべく細い声を出すようなイメージです。
ただし、これも感覚をつかむのが一人では難しいため、専門家やボイストレーナーに指示を仰ぐのをおすすめします。
裏声が上手な歌手のマネをするのも、裏声を習得するコツの1つです。ただし、プロの歌手は声域を広げるためにレッスンを受けていることがほとんどです。マネをしようと無理をすると、喉を痛める可能性もあるため注意しましょう。プロの発声方法について詳しく知りたい方は、ボーカルスクールに通って、レッスンを受けることをおすすめします。
ここでは、裏声を出す練習におすすめの曲を男女別で紹介します。
男性編(ファルセット)
男性編(ヘッドボイス/ミドルボイス)
女性編(ファルセット)
女性編(ヘッドボイス/ミドルボイス)
歌う練習をする前に、裏声の息の漏れ方、声の太さや硬さなどに注目して聴いてください。高音が出にくいと感じる場合は、鼻歌から始めるのもよいでしょう。
裏声を鍛えるとどのようなメリットがあるのか気になる方もいるでしょう。ここでは、裏声を習得することによるメリットを3つ紹介します。
息の漏れた裏声=ファルセットを習得すると、地声だけで歌うよりも幅広い表現が可能で、あたたかい感じや透明感、優しさなどを表現できるようになります。さらに、ファルセットと地声を使い分けられるようになると、地声の力強さと裏声の繊細さの違いも表現できます。
一方、息の漏れていない力強い裏声=ヘッドボイスやミドルボイスを習得すると、地声の延長線にあるような強くて硬い高音で歌うことが可能となります。激しさや壮大さを表現するのに役立ちます。
地声だけでは出せる音に限界があります。地声で無理やり高音を出そうとすると、喉が枯れたりつぶれたりする原因となります。裏声を習得すると出せる音域が広がります。高音域が1オクターブ以上広がることもあり、歌える曲の幅が広がるでしょう。
特にヘッドボイスやミドルボイスを習得すると、これまで高い声が出なくて諦めていた曲に挑戦することができるようになります!
息の漏れたような裏声=ファルセットを鍛えると、ミックスボイスも習得しやすくなります。ミックスボイスとは、ヘッドボイスやミドルボイスなど、息の漏れていない裏声を指します。ミックスボイスは、ファルセットを加工して出せるようになるので、ファルセットの出せる範囲=ミックスボイスの音域(声域)と言っても過言ではありません。。ミックスボイスは地声のパワフルさと遜色なく出すことができるので、とても人気のある発声方法の一つです。
裏声の出し方に関するよくある質問について回答します。裏声が出せずに困っている方は、最後までお読みください。
急に裏声が出なくなる原因には、以下の理由が考えられます。
声が出なくなった場合は、悪化を防ぐために喉を休めましょう。喉の痛みが強い場合は、速やかに医療機関を受診してください。
喉を痛めないためにも、普段から栄養補給と十分な睡眠を意識したり、喉を潤すことが大切です。練習をする際は、適度に休憩をはさみながら行いましょう。
女性は比較的裏声が出しやすい傾向にありますが、男性は地声の方が得意であることが多いです。男性が裏声を出すためには、裏声を出すコツで紹介した方法に加えて「リップロール」や「タングトリル」などの練習方法がおすすめです。
リップロールとは、口を閉じて唇をブルブルと震わせる方法です。リップロールをしている間の声帯の状態は裏声(ファルセット)の状態に近いとも言われており、裏声が出しやすくなります。
タングトリルは舌を使用した練習方法です。舌の力を抜くことで、裏声が出しやすくなるといわれています。少し口を開けて舌を歯の裏側に置きます。「ラ」や「ル」を発声する感覚で息を吐きながら舌を震わせます。リップロールとタングトリルは、練習すればリラックス効果もあるため、普段の練習に取り入れてみましょう。
声帯がむくんで必要以上に閉じやすい場合は、裏声がかすれることがあります。
また、睡眠不足や飲酒時など、不可抗力で声帯が閉じてしまうときに無理に声を出そうとすると痛んでしまうことがあります。裏声に限らず、声が掠れてしまうときは思い切って声を出すことをやめることをおすすめします。
今回は、裏声の出し方のコツについて紹介しました。裏声を出す際は喉を十分に開いて、地声と裏声を交互に出したり、鼻歌を歌ったりする練習方法がおすすめです。
しかし、裏声の出し方を実践しても上手くできない方や早く上達したい方は、プロの力を借りることでスムーズに発声できることがあります。
「人前で歌うのは恥ずかしい」と感じる方は、Beeボーカルスクールがおすすめです。Beeボーカルスクールでは、レッスンは防音ブース内で行うため、ほかの生徒に歌声を聞かれる心配はありません。
初心者の方からプロ志向の方まで、一人ひとりに合わせてきめ細かいレッスンを行っています。Beeボーカルスクールでは「45分無料体験レッスン」を実施中です。歌に関する悩み相談もできるので、興味のある方はぜひ活用してください。
Beeボーカルスクールでは45分間の無料レッスンを行っております。
まずはお気軽に無料体験レッスンをご利用ください。
\無料体験でグッと上達実感!!/
無料体験レッスン