声帯を整える4つのストレッチ方法を分かりやすく解説

ボイストレーニング

2021/06/18

投稿者: 西 貴正

声帯を整える4つのストレッチ方法を分かりやすく解説

しっかりと通る発声や、美しい歌声のためには、事前の準備が欠かせません。オーディションやスピーチなど、大切な本番の前には声帯周りのストレッチを念入りに行うことで、練習の成果を存分に活かせるでしょう。

また、時間があれば声帯周りのストレッチの前に、顔から足先まで全身のストレッチも念入りに行うと、さらに効果的です。

この記事では、とくに声帯周りのストレッチに絞って、具体的な方法を分かりやすく解説します。

声帯を整えるストレッチ方法4選

歌を歌たったり、声を出したりする前には、声帯周りを柔らかく整えて、気持ちよく声が出るように準備をしておきましょう。

4つのストレッチ方法を解説します。

1. 深呼吸

歌う女性

正しい深呼吸は、歌や発声に必要な呼吸量の増加につながります。具体的な方法は下記の通りです。

  • 背筋を伸ばした正しい姿勢を作り、口から息を限界まで吐ききる。その後、鼻からゆっくりと肺に息を吸い込む。
  • 背筋を正した状態を維持し、腹部が大きく膨らむよう意識しながらさらに息を吸い込む。
  • 息を吸ったときの2倍の時間を意識し、お腹がへこむように、ゆっくりと口から細く鋭く息を吐ききる。

このサイクルを5回程度繰り返すことで、深い呼吸ができるようになります。

2. 舌のストレッチ

舌はほぼ筋肉でできており、柔軟な動きは滑舌と直結しています。舌のストレッチをすることで聞き取りやすい発音につながるでしょう。舌の運動にはさまざまな方法がありますので、いくつか具体例を紹介します。

  • 立ったまま両手を後ろで組んで顎を上げ、まっすぐに舌を突き出してから、鼻先に向かって上げ、その状態のまま1分程度キープする。
  • 口を閉じたまま、舌を前後左右に動かす。このとき、舌を丸めないように意識する。
  • 「アッ」と声を出しながらできるだけ大きく、舌を前に出す動作を繰り返す。
  • 舌を上顎と前歯の根元に付け、吐く息で振動させる(タングトリル)

これらの方法を何度か繰り返しましょう。好きなものを組み合わせてみるのもよいでしょう。

3. リップロール

唇や表情筋をほぐすことで、声帯に負担がかかるのを防止するトレーニングです。方法は簡単で、唇を閉じた状態で息を吐き、その息で唇をぶるぶると震わせます。

上手くできない場合は下記の可能性が考えられます。それぞれの対処法を実践するとよいでしょう。

原因 対処法
顔に力が入りすぎている 顔のマッサージなどをして力を抜く
呼吸量が足りない
(吐く息の量が足りない)
深呼吸をする

4. ハミング(鼻歌)

ハミングをすることで、声の通りが良くなる、高音域のトレーニングになる、などの効果があります。正しいハミングの方法は下記の通りです。

  • 口を閉じ、力を抜いて、鼻腔に響かせるように「ンー」と声を出す。
  • 鼻の頭を触ってみて振動や響きを感じるか確認する。(響きを感じれば正しいハミングの状態)
  • ハミングを維持しながら、音階を変えていく。

課題曲などがある場合は、ハミングで歌うことで練習にもなります。

声帯のストレッチを行うメリットと怠るリスク

喉を押さえる女性

声帯のストレッチを行うことで、緊張がほぐれ声が出しやすくなります。声帯のストレッチを怠ると、声帯を痛める、実力を発揮できないといったリスクにつながってしまうでしょう。

メリット1. 声が出しやすくなる

普段から声帯ストレッチを入念に行ことは、滑舌の良さや、声の通りやすさにつながっていきます。そのため、日々の積み重ねで歌いやすい状態の維持ができるでしょう。

メリット2. 緊張がほぐれる

緊張感が高まる場面では、いつも行っている声帯ストレッチが有効です。腹式呼吸は呼吸を深め、リラックス効果も期待できます。また、リップロールは顔が強張っていると上手くできないため、緊張をほぐすきっかけにもなるでしょう。

リスク1. 声帯を痛める

声帯に負担のかかる無理な発声は、声帯を痛めるだけでなく、声帯ポリープの原因にもなってしまいます。声帯ストレッチを行うことは声を出しやすくするだけでなく、これらリスクの低下につながります。

リスク2. 本番で成果を活かせない

スポーツにも言えることですが、事前の準備は本番に大きく影響します。歌やスピーチなど、せっかくの練習の成果も本番前の状態が整っていなければ、実力を発揮できずに終わってしまうでしょう。声帯ストレッチは、練習の成果をしっかりと発揮するためにも有効です。

声帯を鍛えるために普段から行うストレッチ法(チューブ発声法)

声帯を鍛えるために普段から行いたい方法が、ストローを使った「チューブ発声法」です。喉を痛めた人の治療の現場でも使われる、医学的にも根拠のあるストレッチ方法です。[注1][注2]

チューブ発声法には、下記のメリットがあります。

  • 使うものはストローのみのためコストがかからない
  • 自宅など大きな声が出せない環境でも声帯ストレッチができる
  • 自分で声帯が整っているか確認できる
  • 声を長く出せるようになる

では、具体的な方法を解説します。

[注1]NHK健康ch:自分でできる声帯ポリープの予防・再発防止策<話し方、保湿、のどのトレーニング
[注2]吉耳鼻咽喉科アレルギー科:自分で行う医学的ボイトレ(音声治療)

ストローを使ったチューブ発声法の具体的なやり方

ストローを1本用意して、下記の方法でやってみましょう。

  • ストローを口にくわえる
  • 地声で「うー」と、5秒から10秒程度発声する
  • 慣れれば、音階をつけて発音する

この方法で、呼気量を一定に保って行います。回数は1日50回を目安としてください。

次に、チューブ発声法の練習のコツや上手くいかないときの原因を解説します。

ストローはくわえすぎない

ストローをくわえるときは、喉の奥ではなく、舌先に軽く触れる程度にします。また、くわえた際に舌が下がりすぎたり、上がりすぎたりしても良くありません。イメージとしては「え」の発音の舌の位置を意識しましょう。

自然な声を出す

声は地声が慣れてきたら、裏声でもやってみましょう。ただし、このときに頑張って声を出したり、逆にささやくような声でやったりしてもいけません。

また、しっかりと息が出ているか、ストローの前にティッシュを持って来て、揺れるかどうかで判断しましょう。

息はでているが声が安定しない、苦しいときは声帯が閉じてしまっている可能性があります。

その場合、いったんストローを外し、ハミングで息の流れを整え、声帯をコントロールしてから再度行ってみましょう。あまり力み過ぎるのも良くありません。

音階をつける、歌うのも効果がある

呼気が安定してきたら音階を半音ずつ上げて、地声・裏声、どちらでもやってみましょう。

さらに慣れてきたら、ストローをくわえたまま歌を歌うのも練習として効果的です。

難しい場合はストローの太さを変える

改善方法を試しても、チューブ発声法が上手くできないときは、ストローの太さを変えてみましょう。

ストローは太ければやりやすく、細ければ細いほど難易度が高くなっていきます。基礎発声に自信のない人は、タピオカ用のストローからストレッチを始めてみるとよいでしょう。

声帯のストレッチは声と喉のために大切!

声帯のストレッチやチューブ発声法をすることで、美しい歌声や明瞭で通る発声につながるだけでなく、声帯ポリープなど喉を痛めるリスクを抑えられます。

体をほぐし声が出しやすい状態を作った後は、正しい声帯のストレッチをして喉の状態も万全に整えましょう。

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