倍音とは?活用方法や「よい声」を作る方法をプロがわかりやすく解説
声
2024/01/30
「倍音ってそもそも何?」
「倍音を説明できるようになりたい」
「歌と倍音にはどんな関係性があるの……?」
この記事を読んでいる方の中には上記のような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
倍音とは、ベースの音のほかに鳴っている、2~4倍周波数が高い音のことです。「倍音」を理解すると、歌うときの「声作り」が楽しくなります!
好きな歌を聞くとき、その歌手の歌唱力だけでなく、「声(声色/声質)」そのものに魅了されることもありますよね。歌を歌うのに「声」について考えることは非常に大切なポイントです。
本記事では、倍音とは何かを理解し、よい声を作る方法を解説していきます。「倍音」を知り、歌の表現について理解を深めたい方はぜひ参考にしてみてくださいね。
倍音とは
倍音とは、ベースの音のほかに鳴っている、2~4倍周波数が高い音のことで、よく響く豊かな声(声色/声質)を作る上で重要な要素です。まず「声」の仕組みを知ることが「倍音」を理解する近道となります。
「声」の仕組み
人が「声」を出そうとするとき、声帯が振動します。その振動音が、声の基となる「原音(喉頭音源)」です。この原音が然るべき空間(複数の共鳴腔)に響いて、それが外に発せられます。
これが「声」です。
たとえば、「ラ」の音を出そうとするとき、声帯の振動音である原音には、想定した高さの「ラ」以外の音も鳴っています。1オクターブ高い「ラ」の音や、その上の高さの「ミ」といった、ほかの音も鳴っているのです。
ですが、それらの音は耳では聞こえませんよね。
想定した「ラ」以外の音を「倍音」と呼び、それらは高さとして耳に入ってくる音ではなく「声色/声質」として感じられる材料となるのです。
倍音は「よい声」の重要な要素
同じ高さの「ラ」を複数の人に出してもらったとして、みんな同じ声ではありません。それはこの「倍音」部分の響かせ方が人それぞれ異なるためです。
YouTubeなどで「440Hz」と検索してみてください。「Hz(ヘルツ)」とは、周波数のことです。この周波数は「ラ」の音です。
次に、440の倍数である「880Hz」と検索してみてください。1オクターブ高い「ラ」の音です。さらに440の整数倍である「1320Hz」と検索してみてください。「ミ」の音です。
人が声を出すとき、整数倍の周波数が同時に鳴っています。想定して出そうとした音を「基音(基本波)」、「倍音」とは、それ以外の音を指すわけです。
この倍音は、外に発せられるまでの「声道」によって、その人だけの「声」となります。この声道には複数の共鳴腔があり、その体積を変えることで「声色/声質」を作り変えることができます。表現力豊かな歌手やモノマネが上手な人は、倍音を操る名人だということです!
音の音色を自在に変えられる楽器として「シンセサイザー」を思い浮かべる方も多いでしょう。まさに、声道はシンセサイザーとしての役割を果たしていると考えてよいと思います。
よい声の要素「倍音」は「共鳴腔コントロール」で作れる!
「倍音」を効果的に響かせることで、理想の声を手に入れましょう。よい声は「共鳴腔」のコントロール力で決まります。ボイストレーニングでは「高い声」や「強い声」を作ることもできますが、この「共鳴腔のコントロール」も人気のあるコンテンツです。
共鳴腔は複数存在しますが、ボイストレーニングでコントロールできるようになる部分は「咽頭共鳴腔」「口腔共鳴腔」「鼻腔共鳴腔」の3つ。簡単に言うと「喉・口・鼻」です。あまり知られていませんが、それぞれの共鳴腔は役割が異なります。
これらを理解して使えるようになると「自分の声、変だな…」と感じても、自力で微調整することが叶います。そして、きっと自分の声を好きになれることでしょう。
よい声を作る方法その1. 「喉(咽頭腔)」で声色を決める
「喉(咽頭共鳴腔)」は声色を作るのに非常に重要な空間です。喉の空間を使って、太さを調整したり、低い響きをつけたりすることができます。イコライザーがわかる方は「LOW」の役割であると考えるとわかりやすいかもしれません。
「喉を開ける」という表現を聞いたことがある方は多いと思いますが、喉仏を下げると喉が開きます。喉仏を下げる感覚がわかりづらい方は、喉仏の上のあたりを膨らませるイメージを思い浮かべてください。「カエルのように!」と仰る先生もいます。
また、喉を開ける際に「あくびのように」舌の奥を押し下げてしまう方がいますが、これだと声が過剰に太くなったり、力が入ったりしてしまいます。あくびをするときの、喉仏の上あたり、顎下に注力してみましょう。
ちなみに魅力ある歌手の多くは、この喉が開いていることが外からでもわかります。喉仏の上あたりが膨らんでいることを確認してみると、きっとわかると思います。
よい声を作る方法その2. 「口(口腔)」で明瞭さ(トーン)を決める
「口(口腔共鳴腔)」は明瞭さ(トーン)を決めます。明瞭さといってもイメージしづらいかもしれませんが、簡単に言うと「声の明るさ」や「輪郭」のことです。
たとえば、歌詞の内容や曲調がダークなものであっても、声質までも暗く、こもっていると聞こえづらくなってしまいます。イコライザーがわかる方は「MIDDLE」の役割であると考えるとわかりやすいでしょう。
歌うときに「口を開けて」とよく言うように、口の共鳴は口を開けることで得られます。その際、顎を下に下げるイメージをもつと喉周辺に不必要な力が入りませんのでおすすめです。
よい声を作る方法その3. 「鼻(鼻腔)」で高音を響かせる
「鼻(鼻腔共鳴腔)」を有効活用できるようになるとあらゆる面でメリットがあります。
- 声量がアップする
- 声に芯が出る
- マイク乗りがよくなる
- 高い声が出しやすくなる
- 音程が安定しやすくなる
1つずつ解説します。
1. 声量がアップする
鼻はアンプの役割を果たしてくれます。鼻に響く分量が増すだけで、力まずに音量をアップさせることができるのです。
2. 声に芯が出る
鼻に響くと、ふわっとしている声に力強さが加わります。硬さが増し、ロックやソウルフルな歌を歌うのに役立つでしょう。
3. マイク乗りがよくなる
カラオケやバンドをバックに歌うと声がかき消されてしまった体験をした方も多いでしょう。ここで「倍音」が役立ちます。
鼻に響かせることで倍音を強調させることができます。倍音が強調されるとほかの音にかき消されることなく、声を通すことができるのです。
人混みの激しい街中や騒がしいお店の中で、力んでいないのに声が通る方がいます。それは倍音が強調されているためです。
4.高い声が出しやすくなる
同じ音でも、喉に響かせると低音域が、口に響かせると中音域が、鼻に響かせると高音域が強調されることになります。イコライザーがわかる方は「TREBLE」の役割であると考えるとわかりやすいと思います。
強調させすぎると「キンキンする」という印象となるので注意が必要ですが、そのぶん、高音へ向かいやすくなるとも言えるのです。
鼻に響かせるバランスをコントロールできるようになると、高音を軽く出せるようになるのにこれほど強い武器となるものはありません。
倍音を活かした練習方法|喉(咽頭腔)/口(口腔)/鼻(鼻腔)ごとに解説
ここから先は、実際に共鳴腔を共鳴させる練習方法を説明していきます。
始めは意識せずに共鳴させることは難しいかもしれません。しかし、慣れると無意識に共鳴させながら歌えるようになるでしょう。
【喉(咽頭腔)】あくびをするような感覚で喉を開く
喉(咽頭腔)で共鳴させるには、喉を開く練習から始めましょう。
リラックスした状態で舌を下の前歯の裏側に軽く触れさせ、舌の奥をくぼませると、喉の奥が見えるようになります。感覚としては、軽くあくびをしているような状態です。
喉の奥に空間を作ったら、低い声を出してみましょう。そのとき、手で喉仏を触って平常時より下がっていれば、喉(咽頭腔)を開けて発声できている証拠です。注意点は、舌の奥を下げすぎないようにすること。声が太くなりすぎたり、こもっているような声になったりしてしまいます。
みなさん一度はオペラ歌手のような声真似をしたことがないでしょうか。そのとき、大抵は舌の奥を極端に下げて声を出している状態となっています。
歌いたい声に近づけられるよう、舌の奥の開き加減を調整することが、喉(咽頭腔)をうまく活用するポイントとなります。
【口(口腔)】顎を下げるイメージで口を開ける
口(口腔)は、口を縦に開けるように意識するだけで簡単に共鳴させられます。人体の構造上、上顎を上に持ち上げることはできませんので、顎をしっかり下に下げるイメージで声を出すことが大切です。
明るい声をイメージして発声する際、口角を上げることもありますが、注意点があります。口角を上げるのと同時に口が横に広がってしまうと、喉周辺の筋肉が硬直してしまうのです。
試しに、首の前面(喉あたり)を軽く触りながら「い」と発声してみてください。その際に思い切り口を横に広げてみると、首の皮も一緒に横に引っ張られているのがわかると思います。
次に、同じように首の前面を軽く触った状態で「い」と発声しながら、唇を「う」や「お」の形にして発声しましょう。同じ「い」の発声なのに、首の皮が平常時に戻ります。
口(口腔)を開ける際に、唇や首のあたりの感覚に気をつけるだけで、無理なく明るい声が出せるようになります。
【鼻(鼻腔)】口を閉じてハミングをする
「ハミング」をご存知でしょうか?鼻歌を歌おうとすると、大抵鼻に声を集める意識で声を出すと思います。それが「ハミング」です。ただし、集中的に鼻に声を集めたり、普段から声を鼻に響かせたりしやすくするには少し工夫が必要です。
まず、口を軽く開け(その際、顎を下に下げるようなイメージで開ける)、舌の奥を上顎にくっつけるようにし、口から出る声を遮断します。そのフォームで声を喉の奥から出そうとすると少し硬めの声が出るでしょう。これが、声が鼻にしっかり響いている状態となります。
もちろん、この硬さの声で歌を歌うのには抵抗がありますよね。鼻に声が響いている感覚が掴めたら、その感覚のまま舌の奥と上顎の隙間を作りながら声を出すと、鼻に響かせつつ、出したい声に近づけていくことができます。
もっとわかりやすい方法があります。顔を下に向け、身体を脱力させた状態で声を出してみてください。そのとき、顔の表面あたりに声が響いている感覚はありませんか?これも鼻に響いている感覚に近い状態です。
この感覚を持ったまま声を出すのに慣れると、鼻に響かせることが容易になります。
倍音を使いこなしてよい声を手に入れよう!
倍音とは基音より2~4倍周波数が高い音であり、豊かな声(声色/声質)を作る上で重要な要素です。
今より歌の表現の幅を広げたい、響く声で歌いたいという方は、喉(咽頭腔)・口(口腔)・鼻(鼻腔)の3つの共鳴腔を意識しての発声を取り入れてみてはいかがでしょうか。
最初はすべてをうまくコントロールしながら共鳴させて歌うことは難しいかもしれません。しかし、練習を繰り返して3つの共鳴腔の共鳴を習得すれば、豊かな歌声が手に入るでしょう。
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