パイプオルガンの歴史について起源や普及の経緯を解説
ピアノ初心者入門
2021/06/21
パイプオルガンは、空気による圧力によって音を奏でる楽器です。
オルガンと聞くと、現代においては電子信号によってスピーカーから音を奏でる電子オルガンを思い浮かべる方が多いかもしれません。
パイプオルガンの起源は極めて古く、ほかの楽器と比較しても多くの歴史があります。
今回は、パイプオルガンの歴史について、その起源や日本における普及の歴史について解説します。
パイプオルガンの歴史を紐解く起源について
パイプオルガンは、鍵盤楽器に分類される楽器の1種です。
現代におけるピアノのように複数の鍵盤が存在し、一つひとつに対応したパイプを持っています。
複数のパイプは、それぞれまったく違う音域を持っており、役割が異なります。
鍵盤を弾くことでパイプに空気が送られ、圧力によって音が奏でられます。
その構造上、常に同じ圧力で空気を送り込むため、奏でられる音の高低や細かい違いについては表現できません。
しかし、言い換えれば同じ音を安定して奏で続けられます。
音の強弱に関しては、また違う構造を用いて表現されます。
このようなパイプオルガンの仕組みを踏まえたうえで、原点とされる水オルガンの誕生から現代まで紐解いていきましょう。
1.「水オルガン」パイプオルガンの原型となった原初の鍵盤楽器
オルガンの起源は、紀元前3世紀にまで遡ります。
発明したのは、古代ギリシャにおける数学者であり科学者のクテシビオスです。
古代ギリシャの数学者といえば、かの有名なアルキメデスが挙げられます。
アルキメデスは円周率の計算に大きく貢献しましたが、クテシビオスは、アルキメデスに次いで当時人気のあった科学者です。
クテシビオスは、紀元前3世紀にすべての鍵盤楽器の祖先ともいえる水オルガン「ヒュドラウス」を発明しました。
水オルガンは、水と空気を利用することで音を奏でる楽器です。
たとえば、大きな容器に水を入れ、コップを逆さまにして沈めたとしましょう。
コップの中には空気が入っているため、水を入れた容器に対して浮こうとします。
では、このコップの底に穴が空いていたらどうなるでしょうか。
コップの中の空気は、底の穴から抜けていきます。
この穴の先に笛を取り付けてみましょう。
コップを沈めることでなかの空気が穴から抜けて笛に入り、音が鳴ります。
これが、水オルガンの仕組みです。
水には、常に一定の圧力がかかるため、安定して長く音が奏でられるのが水オルガンの特徴です。
しかし、実際には一定の空気を常に供給できないため、音にばらつきが出てしまいます。
2.「ふいご」を用いることで発明されたパイプオルガン
パイプオルガンは、紀元前1世紀には登場していたとされています。
パイプオルガンには、ふいごが用いられています。
ふいごとは、限定された体積を変えることで空気を送り出すエジプトで発明された装置です。
ふいごの原理を利用した分かりやすい例として、ほかにアコーディオンが挙げられます。
底に穴を空けたコップを沈めるのではなく、ふいごによって空気を送りこむことで音を奏でるのがパイプオルガンです。
根本的な仕組みは、水オルガンとほとんど変わっていません。
ふいごには錘が取り付けられているため、常に安定した量の空気が送り出せます。
パイプオルガンには、複数のふいごが使用されており、常に空気が送り出せるような状態になっています。
複数のふいごを常に稼働させることで、途切れさせずに音を奏でられるのです。
当時のパイプオルガンには、ふいごのために専門の職人が付いていたとされています。
安定して空気を送り込むために、職人がふいごを動かしていたのです。
現代のパイプオルガンの場合、職人ではなくモーターを使用して空気を送り込んでいるケースがあります。
しかし、モーターを稼働させると相応に騒音が発生してしまうため、パイプオルガンを設置してある部屋とは別の場所に隔離してあります。
加えて、防音処置を施してモーターによる騒音に対応しているのです。
一方で、気流の問題でモーターによる送風ではどうしても音が乱れてしまうとされています。
そのため、本当に綺麗な音を奏でたい場合は、やはり職人が人力でふいごを動かす必要があるのです。
3.現代にかけて見直されるようになったパイプオルガン
パイプオルガンは、それからあまり作られなくなりました。
しかし、一転して9世紀から再び製造されるようになります。
当時はまだ数ある楽器のなかの1種でしかありませんでしたが、13世紀に入ると教会で使用される大掛かりな楽器として認識されるようになります。
それから時代の変化に合わせてさまざまな改良が加えられていきました。
ルネサンス時代ともいえる15世紀では、より複雑な音色が求められました。
のちにバロック時代と呼ばれる17〜18世紀にかけては、全盛期といえるほどパイプオルガンは非常に注目を集めています。
より巨大なパイプオルガンが製造されるようになり、多くの人に認識されるようになりました。
20世紀に入ると、オルガン騒動がドイツで巻き起こります。
古き良きオルガンを再現するように多くの楽器が製造されましたが、十分に研究が行われていない状況で取り掛かったために大きな問題とされました。
昨今では、歴史を尊重して慎重に扱われるようになり、パイプオルガンが持つ本来の美しい音色が奏でられるようになっています。
「文明開化」によって来日したパイプオルガン
続いて、日本におけるパイプオルガンについて見ていきましょう。
日本にパイプオルガンが伝わったのは、19世紀頃だとされています。
西洋と比較すると、かなり遅く感じられるかもしれません。
日本は明治時代を迎えると、外国からさまざまな文化が入ってくるようになりました。
蒸気船やレンガ建築、洋服、肉食など、これらは文明開化によって日本に入ってきた文化です。
文明開化によって日本に入ってきたもののなかに、パイプオルガンも含まれています。
1900年頃には、日本で初めてのパイプオルガンの製造に着手していたとされています。
1920年には、南葵音楽堂に日本で初めてコンサートオルガンが設置されました。
当時、日本にはまだパイプオルガンを組み立てるための技術が存在せず、設置までは多くの道のりがあったとされています。
1939年、第二次世界大戦が始まります。
これにより、パイプオルガンも甚大な痛手を追いました。
しかし、これまでにパイプオルガンに携わってきた人の懸命な努力によって後を継ぐ人たちに技術が継承され、保守されていきます。
現代では、サントリーホールやザ・シンフォニーホール、宝塚市ベガホールなど、全国多くのコンサートホールなどでパイプオルガンが設置されています。
紀元前にまで遡るパイプオルガンには多くの歴史が詰まっている
パイプオルガンの起源は、紀元前3世紀のギリシャにまで遡る長い歴史がありました。
水オルガンは現代の鍵盤楽器の先祖ともいえ、その歴史や仕組みは2000年以上経った今でも受け継がれています。
そしてその歴史には、多くの人たちが携わってきたことが想像できます。
パイプオルガンを演奏する、演奏を聴く機会がある際は、本記事で紹介した起源や経緯を思い浮かべながら、パイプオルガンの音色を楽しんでください。
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